すっかり冬毛に生えかわりご満悦の天神山から、こんにちは。
1月31日はアート&ブレックファストDay in 天神山が開催されました。
雪深くなるにしたがって秘境の館へと変貌する天神山アートスタジオ。
1月もいつもどおり、現地参加もZoom参加も可能なシステムを採用し、各地からご参加いただくことができました。
当館談話交流室に集まったのは、滞在中の千葉麻十佳さん、坂口千秋さん、そして“ヘーゼル”・ウォン・メイ・インさんの3名。ソーシャルディスタンスはしっかり、空間をぜいたくに使った現地集合です。Zoom参加の皆さんもあわせて、総勢11名ののんびりおしゃべり会となりました。
毎回、滞在アーティストによるワークショップやプレゼンテーションなどを交えて開催している天神山のアトブレですが、今回はアーティストトークの録画上映を実施することに。トークをしてくださったのは、アーティストの戸谷文香(とや あやか)さん。スケジュールが合わず当日参加はかないませんでしたが、収録にて素敵なお話をお聞かせくださいましたよ。
戸谷さんはふだん、名古屋で創作活動をされています。名古屋の大学・大学院で日本画を専攻されたあと、一度日本画から離れ、現在は自然観察に基づく新たなプロジェクトに取り組まれています。
トークではまず、これまでどんな作品をつくってきたのかを振り返ってご紹介いただきました。大学院の修了制作では、自然に生えていた草や枝から色を抽出し、その色で(抽出元の)植物のかたちを和紙の上にトレースしたそう。結果として生じる一枚の絵だけでなく、色の抽出や植物の選定を含めた制作過程全体をひとつの作品と考え、作業の全工程を収録した映像作品も制作したといいます。
そんなこんなで大学院を修了されて間もない戸谷さん。学生時代から関心を寄せていた「自然」というテーマを深掘りし新たな作品をつくろうと模索中だった昨冬、天神山へやってきました。
「札幌で過ごしてみたら、“人が手を付けきれないほどの自然がある”ということが感じ取れて。中心部は緑化計画が進んでいて、都心部に巨木があったりしますし。そんなまちを、最初は観光してるだけだったんですけど…だんだんまちなかに(当たり前のように)ある自然がすごいな、と気づいたんです。」
地下鉄駅が近く市内各所へのアクセスがよい天神山に来てからは、市内の自然散策にいそしんできました。札幌都心部では円山公園や北海道大学キャンパス、周縁部では野幌森林公園や石山緑地などに足を運ぶ日々。それぞれのエリアで植生や、住まう生き物に目をこらしています。
「天神山には今、ヤマガラっていう、おなかがオレンジ色の鳥がたくさんいます。イチイの樹にたわわに実るように集まっていて、鳴き声がうるさいのですぐにわかりますよ笑」
ヤマガラでにぎわう天神山アートスタジオに滞在する直前、戸谷さんは市外複数の土地でリサーチを行っていました。リサーチのキーワードは「自然観察」。ニセコの雪原と倶知安の草原、有珠山の噴火遺構、余市のエコビレッジなど…自然という出発点から道内各地を探検してきましたが、感染症拡大の状況を踏まえ現在はいったん中止している状況。様子をみながら、今後あらたに釧路や知床を訪れ、流氷についても調べてみたいのだそうです。
戸谷さんのプレゼンをみたあとは、フリートークの時間。もちろん、戸谷さんのプレゼンから生まれたギモンもシェアしつつ、話題は「自然」のまわりをぐるぐる。
「洞爺の自然を調べていらっしゃるそうですが、同じく土地の歴史についてはどう考えていらっしゃるのか気になる。作品にどう落とし込まれるのか楽しみ!」
「前回の千葉さんのワークショップに参加しながら思っていたことでもありますが、自然は人を現実逃避させてくれるような力を持ってますよね。アーティストにとってはインスピレーションにもなったり。私はドイツで滞在制作したとき、現地の森からたくさん刺激を受けました。皆さんも、自然が現実逃避させてくれると感じることはありますか?」
「昨日天神山で仕事してたら、窓の外をキツネが通りかかるところをみました!」
「札幌には鳥やキツネだけじゃなく、クマもいますよね。市内の公道を走る自転車を追いかけたりとか…ホラー!」
緑地の自然に囲まれている天神山ですが、1月のアトブレは自然をめぐる話題で盛り上がりました。戸谷さんのように、皆さんもビビッと自然の虜になってしまった経験はありますか?まだないようでしたら、天神山緑地へのお散歩はおすすめです。木々のすきまからリスやふくろうがときどき顔をのぞかせる、天神山アートスタジオへと続く道。ぜひ一度、探検してみて下さいね。
アート&ブレックファストDay in 天神山、次回開催日は未定です。決まり次第、当館ウェブサイトにてお知らせいたします。
それではまた次回!
(レポート:五十嵐)