2022年度冬の国際公募のリポートです。
北海道で車を運転していると、道の脇に立っていたり、急に飛び出してきたりとエゾシカに出会うことは珍しくありません。ドキッとさせられることもしばしば。
さて、Vindur(ヴィンダー)の Alanaさんと升谷さんが現在制作している作品には、そんな北海道では其処彼処にいるエゾシカが登場します。
撮影のために支笏湖へ行った際もエゾシカの群れに出会ったそうです。しばらく観察しているとじっと動かずにいたり、ゆっくりと動いたり、寝ているのか起きているのか、何を考えているのか、、、エゾシカのことをもっと知りたくなったとのこと。
そこで、シカの暮らしや鳴き声などについて専門の方のお話を聞くため、北海道大学の北方生物圏フィールド科学センター・森林圏ステーションの揚妻直樹教授(野生動物保護管理学)と、共同研究している揚妻芳美さん(Waku Doki サイエンス工房)のおふたりにスタジオにお越しいただきました。おふたりが特に研究されているのは屋久島のヤクシカで、エゾシカではないということでしたが、シカの1日過ごし方や、鳴き声の違いなどについて興味深いお話しを伺うことができました。
(写真左から揚妻直樹教授、揚妻芳美さん、升谷絵里香さん、Alana Gregoryさん)
揚妻教授たちは、25年以上に渡って屋久島のヤクシカについて研究し続けており、たくさんの研究成果を残しています。
【アーカイブ】ヤクシカと屋久島 神秘の森に小さなシカを追いかけて
ヤクシカの行動を観察するために後ろを付いて回ったりすること、20年近くひとつのヤクシカの家族を追い続けて家系図を作成し、群れのメンバーの変化を調べていることなど、研究されていることについてもお話しを聞きました。
また何を食べているのかの調査では、大きな発見があったとのこと。今まで食べ跡や糞の観察や解剖をして調べることが殆どでそれが生きている葉っぱなのか、落ちている葉っぱ(枯葉)なのかは、そこからはわかりませんでした。揚妻教授は、ヤクシカが実際に食べているところを観察したことで、落ちている葉っぱ(枯葉)をたくさん食べていることを見つけました。
シカの研究は世界的にも少なく、25年以上ヤクシカの研究を続けていても未だにわからないことが多いそうです。その未知の動物を知ることが研究の原動力になっているんですね。
スタジオの机に置いていたオスのエゾシカの骨を囲みながら、話を伺う様子。
同じニホンジカでもヤクシカは小さく、エゾシカは大きく、生息地も日本列島の南と北ですから、暮らし方ももちろん違いがあることでしょう。
とはいえシカがどんな行動をするのか、どんな暮らしをしているのかというお話は、升谷さん、Alanaさんにとってとても有意義なものになりました。作品制作もラストスパートです。
1月10日(火)19:00からはアーティストトークとAlanaさんのパフォーマンスがあります。是非お越しください!