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「なかなかたどりつかないけど」同時期滞在日本人AIR 途中経過レポート【永岡大輔】

【招聘アーティスト】

ニュー浴場プロジェクト(https://newyokujo.wixsite.com/newyokujo

-永岡大輔(https://tmblr.co/Zc70HdZKsTxtmu00

-松本力(https://tmblr.co/Zc70HdZLu_t7Wu00

 

【プログラム期間】

全70日間(2020年12月18日~2021年3月5日)

-移動期間 30日間(2020年12月18日~2021年1月24日)

-滞在期間 40日間(2021年1月25日~3月5日)

 

昨年12月から始まったAIRプログラム「なかなかたどりつかないけど」では、ニュー浴場プロジェクトとして活動する永岡大輔さんと松本力さんが国内招聘アーティストとしてプログラムに参加しています。

2012年から定期的に北海道夕張を訪れては滞在制作を続けており、過去のさっぽろ天神山アートスタジオの自主事業でもお世話になっているお二人です。

今回のAIRプログラムでは、プログラム日程を移動期間と滞在期間という二つのフェーズに分けて実施しています。

従来のAIRでは、主にフライトを利用した最短経路での移動を前提に、到着後の滞在に主軸を置くことがほとんどでした。…COVID-19のパンデミック以前の話であることは言わずもがなでしょうか。滞在してからの活動がAIRの醍醐味であるとは言えますが、そこに至るまでの移動にだって醍醐味と言えるほどの面白さが秘められているのではないか。その道程もまたAIRの新しい柱となりうるのではないか。そんな問いのもと、アーティストには一定の時間をかけて天神山を目指してもらうというのが今回の「なかなかたどりつかないけど」です。

同時期に天神山での滞在を予定していた国際招聘のアーティストたちは本当にたどりつけなくなってしまいオールリモートへと移行する中、ニュー浴場プロジェクトの二人はそれぞれにできうる夕張へのアプローチを考えていました。今回はそのうちの一人、永岡大輔さんに焦点を当ててご紹介します。

 

永岡さんは、『球体の家』を実現するというプロジェクトを展開しており、実際に傾き転がる球体の家での人々の暮らしを想像することで所属や所有、移動、感覚などありとあらゆるものが変化するという考察を行なってきました。

今回のプログラムでは、人類の移動の歴史を踏まえながら「移動について考えることは、生きることについて考えることに近接する」という仮説を立て、故郷の山形市から北海道夕張市までを歩いて目指すというアプローチを選びました。

それは、冬の東北・北海道を、距離にしておよそ700kmもの行程を歩くということ。決して一筋縄ではいかないことを自覚しながらも、その要所要所では、人々がもつその場所で生きる理由や生きる技術を教えてもらうことも目的に据えています。

知人や紹介をベースとして、会いたい人に会って話を聞くために歩みを進める。想いや技術を預かっては他の人へと渡していく存在でありながら、時には手紙を運ぶメッセンジャーとしての役割も担う。地元にベーカリーがないと言っていた方に食べてもらうため、パンの作り方も教わりました。

どこかロマンチックにも受け取れるプロジェクトですが、その中身は未知の連続なのです。

 

山形を出て塩竈、石巻、南三陸、そして釜石と拠点を変えながら少しずつ夕張に近づいています。立ち寄った場所の多くは東日本大震災の被災地でもあります。

震災からまもなく10年という節目を迎える今、人々の想いや景色がどう移ろっているのか。そこには、「次の311をどう迎えるか」という気持ちをもったまま3月10日を生き続けるのではなく、「これからをどう生きるか」という3月12日の気持ちをずっと持ち続けることの方が大切なのではないかと語る人の姿もあります。未曾有の災害によってたくさんの痛みや変化を経験した後に、まるで何事もなかったかのように暮らすことが恐ろしいということ。今まで大事に積み上げてきた考えが一気に崩れ去るという状況をどう認識するかという点では、私たちが現在進行形で窮しているコロナ禍ともどこか繋がっているようにも感じます。

移動期間として設定していた30日はとうに過ぎ、プログラム期間中に到着できるかもわからない状況ですが、なんとか大切な人たちが暮らす夕張へ、またここ天神山へ無事たどりつくことを祈るばかりです。そして、さながら恋人のようなビッグハグを交わして、おいしいパンと芋煮を囲むのです!

永岡さんの作成している記録(歩いている間にランダムに撮影されたされた写真をみることができます)

コーディネーター さっぽろ天神山アートスタジオ 花田 悠樹