黒田大スケさんによる札幌市立北都小学校でのおとどけアートも、
今日がいよいよ最終日。
いつもどおり雪深く寒い朝です。

今日は、AISプランニングの創造活動支援事業で支援アーティストとして活動している、
兵庫拠点のダンサー・小松菜々子さんが見学に来てくれました。
さっそく名物『ほくとにちにち』紙(あっというまに第7号!)を熟読してくださっています。
いつも〈開放図書室〉に集まると、なんとなく新聞を読んだり会話をしたりしながら
じわじわ始まる北都小学校での一日でしたが、
今日は学校に到着したばかりの黒田さんがいつになくそわそわしています。

「ちょっとあのー‥‥…今日は、最初に会議をしてもいいですか」。
もちろんです編集長。
というわけで始まった、今日の作戦会議。

「実は、今日はまだ新聞ができてないんです。なので、ぼくはまず新聞を仕上げます。
それで、ぼくが編集作業をしてるあいだに、(コーディネーター)漆さんに映像機材のセッティングをお願いしたいんです。
4階の日本人形の部屋に、モニターを設置してきてもらえますか?ぼくもあとで確認しに行きますんで」。
というわけで、漆さんはさっそく映像機材設営チームを結成して、モニターやケーブル類をまとめます。
しかし、黒田さんはいつもよりせかせかしつつ、なんだかしゃべりの間が長めな気も……?

「きのう夜更かしをしてしまって、今ちょっと頭がぼんやりしてるんですけど……
あの、でも映像は昨日の夜に撮影し終わりました。あとは映像の編集をしたらオッケーです」。
今朝のテンションがいつもと違ったのは、夜更けまで映像作品の撮影をしていたからなんですね!
「あと、ぼくは新聞の編集が終わったら、校長先生にお願いして、
校長室にもひとつモニターをセッティングさせてもらおうと思います」。
今回の映像作品は、全部で2点。
モニターを日本人形の部屋と校長室に1枚ずつ設置して上映されることになるようです。
一方そのころ4階では、コーディネーター漆とお手伝いの舟迫さんがモニターをセッティング中。


凍える寒さの教室で、日本人形のガラス箱を割らないように気をつけながら、
慎重にモニターとケーブルを設置していきます。
息の合ったコンビネーションでまもなく設置は完了。
さっそく黒田さんを呼んでみましょう!
と、そのころ開放図書室では、なにやら黒田さんが子どもたちに取り囲まれています。


黒田さんのサインを求め、校長先生に居場所を訊いてやって来たそうです。
皆さん、シャイな黒田さんに臆さずサインをリクエストし、なんだかノリノリ。
最初は押しかける子どもたちに驚いて、状況がつかめなかった様子の黒田さんですが、
最後の方はある種の熱狂をみせる子どもたちにニコニコ、気前よくサインをしていました。
サイン会が解散すると、すぐ脇を歩いていたひとりの子どもが、スッ……と黒田さんに近づいてきました。
「あれ、今日で最後なの?」

どうやらサイン目的ではない様子。
それまで話したことのない子でしたが、
なにやらユニークな特技をたくさん隠しもっているようで——
「変な飛び方する虫の真似!」

虫の動きシリーズはほかにもあり、
ちょっと足の配置や首の動きをいつもと違うふうにして、まわりの人に目線で訴えてみるだけで、
すごい引力でこの子のまわりに劇場空間ができあがっていくのでした。
歌うことも好きで、将来は歌手になろうかと思っているそう。
同業者であるHIKARIさんの歌はどうですか、と訊いてみると……
「あのねえ、一回広場で聴いたんだけどねえ……すっっっごくよかったよ~」。
批評眼も鋭いパフォーマーなのでした。
さて。すごいものをみたという気持ちのまま、4階のモニターチェックに向かいます。
コーディネーター漆と舟迫さんの素晴らしいチームワークで、
小窓の向こうからモニターが覗くように設置されています。

映像は動くか……?

おおっ!ちゃんと上映されています。

でもちょっと気になるところが……

気づけば藤根先生も機材セッティングチームに。
上映の感じは概ねよかったのですが、
ひとまわり小さいモニターでもいいのでは?ということになり、
よりコンパクトなセッティングで再挑戦することになりました。

小窓とぴったりサイズのモニターを持ち込み、位置を合わせ……

ペタペタ……

最後にモニターを上から吊って

これでどうだっ!

「うん、いいですね」。
ということで、日本人形の部屋のモニターは設置完了です。
作業がひと息ついたタイミングで、最後の給食の時間がやってきました。
今日の献立は、白米、みそ汁、鶏天、野菜の和え物、の THE 定食セット。



給食は6年生の教室で食べさせてもらう予定ですが、給食片手に黒田さんが入っていったのは校長室。
今日は校長室発信のお昼の校内放送で、黒田さんから北都小学校の皆さんへ、登校最終日の挨拶をさせてもらうことになっているからです。
と、給食を一旦放置して、校長室を真剣なまなざしで観察しはじめる黒田さん。

指さしているのは……

歴代校長先生の肖像写真です。

1970年代初頭に開校した比較的歴史の浅い北都小学校は、
歴代校長の人数も多くはないため、
こうして肖像写真を一枚一枚額に入れて校長室に飾っているのです。

黒田さんは2点目の映像作品を、この肖像写真群が並ぶレールの一番端に設置したいと考えています。
藤根先生にもしっかり相談。
シュールさで先生の笑いを誘いつつ、OKをいただきました!
そのお礼に、そして日ごろの多大なご協力に感謝して、
藤根先生からリクエストをいただいたサインもしっかり書きます。

「じゃあ、先生の好きな食べ物ってなんですか?」
給食でクラスにお邪魔するたび子どもたちから投げかけられてきた定番の質問を、最終日は黒田さんから校長先生へ問い返します。
こうして藤根先生の好物「トンカツ」と黒田大スケ、夢の競演が実現しました。
そうこうしているうちに、お昼の校内放送が迫ってきました。
藤根先生のご紹介を受けて、黒田さんから最後の挨拶をします。

北都小学校の皆さんからの歓迎と、たくさんの情報提供に感謝して

”特に意味はないけど黒田大スケの「嫌いな食べ物」クイズ”もはさみ……

最後は手を振ってお別れ。
「一応、今日で学校に来るのは最終日なんですけども。
このあとも少し来る……いや、来ないかもしれないし、来るかもしれない。
ちょっとわからないんですけども。見かけたら、声かけてください」。
多忙な黒田さんのスケジュール上、今回のおとどけアートは2週間とコンパクトな活動になったのですが
「アーティストが北都小に通わなくなっても、アーティストの気配が幽霊みたいに学校のあちこちで感じられるといいよね」、と黒田さん含む一同は考えていました。
そこで、二つの工夫をしました。
まず今日セッティングした映像機材は、2月いっぱいあたりまでそのままキープさせてもらい、後日ポストプロダクションを終えた黒田さんの映像を2カ所のモニターで上映させてもらうことにしました。
そして「ほくとにちにち新聞」の発行も、ペースは週刊くらいになりそうですが、もう少し続けてみることにしました。
黒田さんはいなくても、AISプランニングのコーディネーターたちが今後もときどき学校にお邪魔して、新聞を設置したり映像を管理したりしていく予定です。
無事、最後の校内放送を終えると、さっそく6年生の教室へ。
最後の給食時間を一緒にすごします。


6年生ともなると子どもたちも大人びて、
「好きな食べ物は?」とは訊かなくなりますが、
人間関係の機微や他人の気持ちに敏感になり、クラスには思春期っぽい空気感が漂います。
クラス内でのそんな空気をすぐに察した黒田さん。
開放図書室に戻ってくると、クラスの皆がある人気者の子とハイタッチするため密かに企てた謎の手合わせ大会に巻き込まれた、と憤慨しながらも、おもしろがって当時の状況を語ってくれました。

開放図書室での静かな午後も、今日で最後。
いつもどおり、HIKARIさんが曲作りをしながら口ずさみ、
コーディネーターたちは漫画を描いたり新聞に投稿する記事を作成して過ごします。
黒田さんは、今日は少しだけげっそりしてはいますが、
いつものように新聞編集などのパソコン作業にいそしんでいます。

と、ここで4階のモニターの不調が発覚し、一同確認に向かうことに。

なにかがおかしい。

メディアプレイヤーがダメなのか?

えいっ

「うん、大丈夫そうな感じ」。
動きの不安定な機器周辺には、予備の新しい電池を準備するなどしつつ、
円滑な上映目指して力を尽くします。
ここで上映される映像はどんな内容ですか?と黒田さんに訊いてみたところ、
「永遠の子どもと永遠の先生が、問答しながら廊下をずっとさまよっている映像」とのお返事が。
作品に登場するキャラクターは、北都小で出会った子どもたちや先生たちの表情・印象をもとに作られたそうです。
そんなこんなで、機材セッティングをしていたら意外と時間がたっていて、
小学生のみなさんは下校時刻です。
最終日ですし、せっかくなので
玄関で毎日子どもたちとさよならの挨拶をしている藤根先生のかたわらへ行き、
さりげなく挨拶に紛れ込みます。

藤根先生の影に隠れていても、
子どもたちは案外ちゃんと、黒田さんを見つけてくれるものです。
元気よくハイタッチしてお別れです。
子どもたちが帰ったあとは、職員室の先生方に最後のご挨拶へ。
コーディネーター小林と連れ立って
これまでのご協力へのお礼と、今後の上映&新聞発行予定についてお伝えします。




黒田さんは先生方に、一つだけお願いをしました。
「(映像上映は)あそこにあるよーって感じでことさら宣伝していただかなくて(よくて)、
”まあ、さがしてみたら?”って感じでやっていただけたら、いいかなと思います」。
まもなく職員会議が始まるということで、黒田さんは職員室から撤退。
お隣の校長室で、もう一台のモニター設置を開始します。







セッティング完了!
藤根先生の場所はちゃんと空けてあります。
ここでは、黒田さんが「いかにも校長先生っぽい」一人芝居をしている映像が上映される予定です。
モニターのセッティングがすべて終わったところで、名残惜しいですが後片付けの時間です。
お世話になった〈開放図書室〉もきれいに掃除機をかけ、ごみを拾って、原状復帰。


掃除がだいたい終わるころ、一同は仕上げに取り掛かります。
コーディネーター小林とお手伝いのHIKARIさんが、〈童話の森〉と名付けられた絵本図書室へ。
黒田さんの気配をひっそり仕込むため、本棚の隙間に「ほくとにちにち新聞」の配架スペースを設置しました。


黒田さんはこうして北都小を後にしましたが、
今後も「ほくとにちにち」紙の更新や映像上映が約一ヶ月ほど続きます。
いずれもさりげない存在感ですが、子どもたちは黒田さんの気配をどう発見していくのか?
たのしみに待ちましょう。
***
今回、はるばる京都からおとどけアートのために札幌市立北都小学校へやってきた、アーティストの黒田大スケさん。
1月31日にさっぽろ天神山アートスタジオでのアーティスト・トークで語られたところによると、今回新たに制作した映像作品2点は、「うまくいったかどうかはわからないけど、とても実験的なものになっている」とのこと。
黒田さんのようにキャリアの積み重ねが一定以上あるアーティストにとって、それまでの制作発表で評価を得てきた手法や作品から離れ、新たな展開をしていくことは、そんなに簡単なことではありません。
新しく道具をそろえたり技術を磨いたりする時間やお金がかかるのはもちろん、心理的にも、「新しいスタイルやアイディアが、観る人に受け入れられるかな」、「このテーマは自分に向いているかな、皆にも伝わるかな」といったハードルが生れてきます。
だからこそ、アーティストが一歩を踏み出そうとするきっかけのなかに、北都小で受けた刺激やおとどけアートという枠組みが少しでも含まれていたら、それだけでも、今回のアーティスト・イン・スクールの意義は十分あったのではないかと感じます。
あとは北都小の皆さんが、黒田さんにとっても「新しい」新作映像を、広い心と柔軟なまなざしで覗いてみてくれることを願うばかり。どんな反応が発生するのか楽しみです。
☆この活動は赤い羽根共同募金の助成金を受けて活動しています☆
