先日滞在アーティスト榎木陽子によるワークショップが行われました!
ワークショップスタッフによるリポートをご覧ください。
榎木陽子さん
石川県輪島市出身。1978年石川県輪島市生まれ、2000年に筑波大学を卒業後ベルギーに留学し、2006年アントワープ王立美術アカデミー修了。制作と発表を続けながら、現在は横須賀市において「子どものためのアートスクール」を主宰。
日曜日のスタジオでは市民との交流を行いながら、次の作品のリサーチを含めたワークショップを実施。
・当日の記録・
天神山のアーティストブレックファーストおしまいの流れで緩やかにちょっと早まってワークショップがスタート。
お茶やお菓子を囲む間もないほどにドンドンご予約が続き14:20まで集中しながらポートレイトを書かれてた陽子さん。(お部屋の準備をしていたらいつのまにか始まっていました。)
空間には、扉をあけて一番最初に目に入る場所に新聞紙を広げた大きな机と向かい合うための椅子があるスペース・その斜め後ろに壁に絵を乾かしていて下に作業ができるようになっているスペース(後からきいたら人がこなかったら陽子さんが制作作業するための場所だったらしい)・一番奥にホワイトボードがあってプロジェクターから能登・輪島の震災の写真や動画が13秒間隔でながれているスペースがあった。
主なワークショップは
・5分間の交換
・13秒のトレース
5分間の交換では子さんと参加者が1対1で向き合い、「参加者が最近祈ったことを紙に書く時間」と「陽子さんが祈ってることを思い出している人を描く時間」を交換する。お互いの違うことをしている時間を5分間を交換するワークショップ。
13秒のトレースは能登・輪島に最初の地震がきてから、二度目の地震がくるまでのインターバルの時間。輪島では二度目の地震で火事があり、その後2024年9月の奥能登豪雨で大洪水になり、地震の爪痕も瓦礫も今までの風景も流れてしまった。失ってしまった風景を、書き留めたいという想いから出発したワークショップ。(そして反語的にはあるけれど、13秒では多くの事が書き留めきれないことも体感できるワークショップでもある。)
オープンしてから立て続けに「5分間の交換」のワークショップ希望者が8名続く。
参加者は午前中の天神山のブレックファーストに参加してた方なので海外の方が多い。
ワークショップ概要をざっくりと説明した後、陽子さんの「よーい、ドン!」の合図で5分間の交換がはじまる。
(海外の方へはなんて伝えてたんだろう、ちゃんと聞いておけばよかった。)
陽子さんと参加者が向き合って対峙している。
ただお互いに向く対象が参加者は「自分の過去(最近祈った記憶)」で陽子さんは「過去を思い出してる今の参加者」なのが面白い。
(陽子さん→参加者→自分の過去(紙)というふうに向く先がそれぞれ一方をみつめている。)
対峙しているのにお互い向き合っていない、でも空間としては確実になにかを共有しているのが外からみていると分かるから不思議。あれはいったい何を共有してるんだろう。
5分間の交換をしている時の場の空気はギュッと密度が濃くなっているように感じる。
その引力に引っ張られて観ている周りも集中してシンと時もあれば、まわりはザワザワしてるけれど二人の空間には静やかな別の時間がながれていたりする時もある。
どんな空気の時でも変わらず陽子さんは参加者の「今」を、うつしとろうと真摯に参加者に目を向ける。
今を少しもこぼれ落とさないように、参加者をみつめる眼差しがとても素敵。
「わたしと一緒に5分間を過ごしてほしいんです。」参加者の方にそう伝えた言葉が耳に残った。
そして名助手の陽子さんのムスメさんのマリさん。陽子さんの創作のサポートをしつつ、陽子さんとワークショップ参加者がつくる空気の中をふよふよと漂っているのが印象的でした。
怒涛の8人との時間交換がおわると、ちょっとだけほっと一息。
その後に、陽子さんが以前別のイベントで仲良しになった方がいらっしゃって13秒のトレース動画をみながら雑談をしていた。13秒のトレース動画は、陽子さんが2024年の1月1日に震災の後に2か月に1回地元にもどる度に記録していた写真や動画を13秒間間隔で流してく動画。
それを二人で眺めながらおしゃべりしている。陽子さんの過去を一緒にみつめているようにも見えた。
そのあともゆるゆるとワークショップ会場に訪れてくれる方があり、最後は親子づれの方がいらっしゃった。
お母さんとお子さん。最初にお母さんが5分間の交換をして最後にお子さんがやることになった。
(以下、分かりやすいように、お母さんをMさん、お子さんをOくんと書きます。)
変わらずに参加者をみつめて5分間を描ききる陽子さん。陽子さんが描ききったあとも、Mさんが過去の祈った時間と向き合う時間は続く。時に陽子さんと雑談を重ねながらMさんの祈った時間を書ききる。おおよそ20分。
「こんなことを書こうかなとは思ってきたけど、まさかこんなに言葉になるとは思わなかった。」という言葉がMさんから出る。
誰かがみつめていてくれてただ待っていてくれるとそれだけで自分の意図しないところまでかけたりできたりするのかもしれないなーと思いつつ、Oくんとバトンタッチ。
Oくんには「何か好きなものの絵を書いてね」と陽子さんからリクエスト。
Mさんの携帯を借りて写真を見ながら、集中して書き続けるOくん。4分くらいのタイミングで一瞬書き終え集中が途切れる瞬間がみうけられたけれども、陽子さんが描くことに向き合ってる様子をみて、また描き進めるOくん。
誰かが集中している姿をみて、自分もいつの間にか集中しちゃうことってあるよなー、だから誰かといるって素敵だよなーと思う。
Oくんの描いてくれた好きなモノが、カンブリア紀のハルキゲニアが素敵すぎて、大人たちが盛り上がる。
約5億年前の恐竜がでてくるよりも前の海の世界らしい。カンブリア紀は生物が爆発的に増えて、しかもそのカンブリア紀の生物はどれも特徴てきな見た目をしているらしい。その中でもOくんが好きなのがハルキゲニアだそう。「これ、3cmくらいしかないんですよ」とMさんがおしえてくれる。Oくんが好きだからつい詳しくなってしまったというMさん。
しばらくハルキゲニアとカンブリア紀の話で大人も子供も盛り上がる。
この対話もおしゃべりも5分間の時間の交換があったから生れた時間かと思うと、幸せな気持ちになる。
そしてこの時間を通してつくられる陽子さんのパフォーマンス作品がとても楽しみになった。
いままでは絵を書かれることがメインだったけれど今回は初めてのパフォーマンス作品をつくられるそう。
「いろいろやったことないことして失敗したいんですよ」という陽子さん。
きっと失敗にはならないんだろうなと、今回のワークショップをみていると思う。
関東でおこなわれるらしい。是非、気になった方は陽子さんのHPをチェックしてみてください。
(書いた人:べー)
榎木陽子/Yoko Enoki (美術):活動拠点 日本