2025(令和7)年度札幌市文化芸術創造活動支援事業の助成を受けて、一般社団法人AISプランニングが実施する「アーティストの創作活動を支援するためのチームビルディング事業」の第2回合同会議を行いました。この会議はアーティストの創作活動支援プログラムに採択されたアーティスト4名(支援アーティスト)と創作活動支援人材育成プログラムに登録したメンバー(人材育成メンバー)が協力して実践的な活動を行うための作戦会議です。

- 第2回チームビルディング合同会議
日時:2025年10月18日(土) 10:00-12:30
会場:公益財団法人北海道文化財団 会議室、オンライン
参加者:14名(支援アーティスト、人材育成メンバー、審査員、札幌市職員、AISスタッフ)
※当事業は令和7年度札幌市文化芸術創造活動支援事業の助成を受けて実施しています。
https://www.city.sapporo.jp/shimin/bunka/entaku/souzoukatsudou_2025.html
1.支援アーティストの近況報告と今後の計画など
10月の初旬、人材育成メンバーも同席した支援アーティストとの個人懇談が開催されました。それを踏まえて、活動報告と人材育成メンバーとの協働を探る合同会議となりました。
・【創造活動支援】個人懇談(活動の聞き取り)の様子
https://ais-p.jp/news/2025/10/17/artistmeeting/
1-1. 川崎 乃佳/ Nonoka Kawasaki
https://www.instagram.com/kawasaki.nonoka

伊達市大滝区での大滝とカナダを結ぶ国際交流アート展(10/11-13)では、連休の3日間で200人弱の来場者があり、無料配布用に用意していたポストカードが数時間で無くなってしまったそうです。また、オリジナル作品も展示のみのつもりが購入希望者がいたりという報告がありました。オリジナルと印刷物(ポストカード)の中間の販売作品があった方が良いのではないかということで、SURI-PROとのコラボレーションも検討されました。
11月は東京・吉祥寺のプティット村での展示、12月〜翌年1月にはカナダ・レイクカウチンへ滞在しギャラリーで展示をしようと模索中とのことでした。将来的には、日本の伝統技法を取り入れた作品制作を考えているので、日本画や水墨画の技術的なことなどをリサーチしたいとのこと。早速、日本画作家の個展を見学に行くことになりました。他にも人材育成メンバーから、和服の生地をキャンバスにする手法やギャラリー巡りなどの提案もありました。
また、「札幌の空・海・陸を舞台に現れる五体ほどの“戦獣士”(可憐さと力強さをあわせ持ち、それぞれが異なる個性や属性を宿した獣の姿をした守護者たち)を自然と都市をつなぐ象徴として描きたい」との構想が語られ、この件についても活発な意見交換がありました。
仲村うてな個展「すくう 際をたもつ」(20259.4-11.4)@グランビスタギャラリーサッポロへ
その後、ギャラリー巡りもしたそうです
【アーティストの創作活動支援プログラム・川崎乃佳】活動記録①
https://ais-p.jp/news/2025/10/17/nonokakawasaki01/
1-2.小松 菜々子/Nanako Komatsu
https://www.komatsu-nanako.com/

空き地文庫
小松さんは仕事の関係で、神戸の自宅1階の本屋兼オルタナティブスペース兼公園の「空き地文庫」からのオンライン参加となりました。ネット回線の関係で画面オフだったので、空き地文庫の写真を。
今回の報告では、自身のルーツに関するリサーチでは、お祭りに関する情報や書籍も収集出来てきていることとのことでした。レコードと古書の文教堂書店は、北海道ゆかりの本も多く、「札幌文学」のバックナンバーや札幌ゆかりの小説家の本も多くあるので、札幌に滞在する時はいつも訪ねているとのこと。お店の方にもよく相談に乗ってもらっているそうです。そのお店で出会った「北海道 祭りの旅」(著者:合田一道、出版:北海道新聞社)は、道内のお祭りが網羅的に掲載されていて、これから読み進めるのが楽しみとのことでした。また、小松さんの祖父が関わっていた文芸同人誌「札幌文学」に関する情報収集をしているうちに、彼と天神山近郊にあるギャラリーを繋ぐキィ・マンの存在がわかり、次回のリサーチに繋がるような報告もありました。
11月にも来札し、三笠や小樽でのリサーチ、上士幌でのアーティスト・イン・レジデンス(AIR)も予定しているとのこと。神社の例大祭(お祭り)に関する聞き取りの日程調整もありました。

「北海道 祭りの旅」の表紙
【アーティストの創作活動支援プログラム・小松菜々子】活動記録①
https://ais-p.jp/news/2025/10/17/nanakokomatsu01/
1-3.風間 雄飛/Yuhi Kazama
https://www.instagram.com/yuhi.kazama/

会議室から展覧会会場へ移動
手前の携帯ではオンライン参加の小松さんにも情報共有
個展の会期中なので、展覧会会場で作品を見学しながら「刷り」に関する説明を聞きました。何度聞いても「刷り」は奥深くて楽しいです。作品を観ながら、具体的に手法をお伺いすると、時間があっという間に過ぎてしまいます。
SURI-PRO(風間さんが摺師となり、分野横断的に様々なアーティストとコラボレーションするプロジェクト)の途中経過として、小林大賀氏との活動2日目の報告がWEBサイトにあります。次回の活動日(10/24)も、人材育成メンバーの参加も可能です(工房使用料など費用が掛かります)。そして、SURI-PRO第2弾も計画中とのことでした。他にもコラボレーション企画を進めるかも?
【アーティストの創作活動支援プログラム・風間雄飛】活動紹介①
https://ais-p.jp/news/2025/10/13/yuhikazama01/
また、将来のカザマプリントスタジオ(工房計画)を開設するための物件探しについても、具体的な条件だけでなく予算等々にも言及するなど、本気度が高いです。こちらは、支援事業期間での完成を目指すわけではありませんが、人材育成メンバーも手伝えること探していこうと思います。

作品の前で「刷り」について説明する風間氏
- 北海道文化財団アートスペース企画展vol.61 風間雄飛 個展『おふたりやま』
会期:2025.8.5~2025.10.18 9:00~17:00(土・日・祝日 休館) 入場無料
※ただし最終日の10/18(土)は開館
1-4.桑迫 伽奈/Kana Kuwasako
https://www.instagram.com/kanakuwasako/

T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2025で自身が行ったコーディネーター業務内容の紹介がありました。フェスティバル(展示)開催するにあたり、誰が担当かわからないような「こぼれ落ちるものをすべて拾う役割」と表現にしていました。外注の会場運営スタッフのマニュアル以前の来場者に対するふるまい(マニュアルにない来場者からの質問に対する回答の仕組みなど。来場者から聞かれたことに「わかりません」で対応が終わらないために)などをシステムとして構築するなどの業務を行ったそうです。他にも、美術館やギャラリー以外での展覧会の意義と難しさも共有されました。
11月から天神山アートスタジオに滞在し、他の天神山滞在アーティストと交流したり、自身の活動をふりかえり整理する時間を持つとのこと。その後、作品制作に徐々にシフトできればいいなと考えているとのこと。着実に計画が進んでいます。そして、1度立ち止まるための「制作のための活動ではない行為」については、会議後に展開がありました。詳細は、4.番外編でお伝えします。
☆SURI-PRO(10/24)活動速報
桑迫さんは、風間さんと小林大賀氏とのSURI-PRO活動日の見学に行ったそうです。風間さんから刷りについて説明を受け、長年の疑問に的確な解説・説明をしてもらったそうです。お話をする中で桑迫さんが版画でやってみたいことと、風間さんがこれから試してみたいことと一致することがわかったので、これからコラボレーション活動が開始されるそうです。このような支援アーティスト同士の交流・コラボレーションが活発に行われる環境は、札幌の文化芸術インフラとしても重要なのではないかと思いました。

SURI-PROコラボレーション中の小林大賀氏と桑迫さん
・小林大賀氏のWEBサイト / 手に持っている版の原画もこちらで観れます
https://www.taigakobayashi.com/
2.審査員からのコメント

当事業の審査員でもある公益財団法人北海道文化財団の村山和佳子さまから、財団の活動紹介がありました。アーティストやアーティスト支援する人材には、このような支援組織の情報は必要です。(公財)北海道文化財団は、助成事業を通して北海道(特に地方)における文化振興事業、アーティストの派遣を通じて文化芸術に接する機会の創出・文化鑑賞の機会を拡充するほか、文化活動に関わる様々な人材の育成に取組むなど、幅広い文化芸術の振興に関する事業を行っています。事務所に併設されているアートスペースでは年に4,5回の企画展が開催され、アーティスト・インタビューが情報誌「北のとびら」に掲載されます。道内で活動しているアーティストを中心に選んでいるとのことでした。当事業の支援アーティスト(桑迫さん、風間さん)のインタビュー記事が掲載されている情報誌「北のとびら」をいただきました。道内の各地域の情報や文化芸術活動の紹介も充実している冊子です。同財団のアートスペースにはバックナンバーもありますし、WEBサイトから読むこともできます。
北海道文化財団WEBサイト:助成金情報もこちらから確認できます

そして、当事業のカタチの見えない活動・プロセスに伴走支援する助成事業の重要さも語られました。選ばれた支援アーティストのその後の様子も気にしてくれている様子と、人材育成メンバーの活動にも温かい言葉を頂きました。ありがとうございました。
【審査結果のお知らせ】アーティストの創作活動支援プログラム:審査員からのコメントもあります
https://ais-p.jp/news/2025/09/12/artist/
3.人材育成事業について
AISプランニングのコーディネーター小林亮太郎から、人材育成メンバーが、AISプランニングの他事業(おとどけアート、SIAF関係など)や札幌市文化芸術創造活動支援事業に採択された他団体のイベントでサポートスタッフとして働き、その様子を広報アウトプット(ブログ、SNS等での情報発信)などを有償で行う「関わるを支える」事業であることが説明されました。
また、年度内に開催したい座談会やギャラリーツアーなど、人材育成メンバーでやってみよう企画を募集するので、積極的な提案を期待しているとのこと。今回の合同会議では時間が足りなくなったので、後日、共有システムで企画を進めようということになりました。
アーティストが作品制作を行う場合はアーティスト個人で行うことの方が多いですが、個展などの発表の機会は大きくなればなるほどチームで関わることになるので、この事業は、その実践の場でもあるということでした。同時に、アーティストの感謝の表わし方やふるまいなどにも言及がありました。「チームビルディングのあり方」についても、時間を越えて話し合いました。

- 育成メンバーは募集中です。下記にある申請フォームから是非に!
https://ais-p.jp/news/2025/08/01/ikusei/
4.札幌市担当職員から
この事業はアーティストの困りごとに寄り添う内容であることが、決まったこと(公演や展覧会など)への資金提供助成金事業とセットになることで、札幌らしさを構築できていくのではないかと期待しているとのこと。この事業は実証実験ではあるが、行政もアーティストに協力したいと考えているとのことでした。このようなネットワークが広がって、使いやすいネットワークBANKのようなものが構築できれば良いと考えているとのこと。

風間さんの個展全景と安田侃さんの彫刻作品
5.番外編
会議後、数人で近くのお昼を食べました。合同会議では時間が不足しがちな交流の時間でもあります。(公財)北海道文化財団の近くにあるかでる2.7の2階にあるカフェ・ド・マデル(就労支援B型のレストラン)に行きました。働いている方々の実直な対応と優しい味でファンも多いお店です。
https://homepage.kaderu27.or.jp/facility/service/t9q0lm00000008cy.html#s6

定番の豚汁セット
この交流ランチ中に、突発的にアーティスト支援の企画がまとまりました。桑迫さんの「制作のための活動ではない行為」についてです。個人面談でも育成メンバーから提案のあった「ビーチコーミングに行こう!」です。ほぼ女子会のノリで詳細が決まりましたが、これもアーティスト支援です。後日、詳細をご報告いたします。