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第1回チームビルディング合同会議

 2025(令和7)年度札幌市文化芸術創造活動支援事業の助成を受けて、一般社団法人AISプランニングが実施する「アーティストの創作活動を支援するためのチームビルディング事業」の第1回合同会議を行いました。この会議はアーティストの創作活動支援プログラムに採択されたアーティスト4名と創作活動支援人材育成プログラムに登録したメンバーが協力して実践的な活動を行うための作戦会議です。

  • 1回チームビルディング合同会議

日時:2025913日(土) 1600-1800

会場:天神山アートスタジオ 交流スタジオA

参加者:17名(支援アーティスト、人材育成メンバー、審査員、札幌市職員、AISスタッフ)

 ※当事業は令和7年度札幌市文化芸術創造活動支援事業の助成を受けて実施しています。

https://www.city.sapporo.jp/shimin/bunka/entaku/souzoukatsudou_2025.html

 

1.AISプランニング漆代表からのご挨拶

「アーティストの創作活動を支援するためのチームビルディング事業」は、アーティストの創作活動支援プログラム(審査員によってえらばれたアーティスト4名、以下「支援アーティスト」)と、創作活動支援人材育成プログラム(登録制、以下「育成メンバー」)の、ふたつのプログラムがあります。この事業はふたつのプログラムを連動させ、支援アーティストの創作のプロセスを充実させるために、育成メンバーが支援アーティストと一緒にチームとして活動(チームビルディング)していく札幌モデルを構築することが目的であると語られました。AISプランニングは、そのための場や状況を、この事業を通して作っていくとのことでした。

支援アーティストには、チームビルディングでの支援ができうる方が選ばれたことと、アーティストを支える人材を育成する目的のある人材育成プログラムを同時進行し、連動させることで、より良いチームビルドを目指すとのことでした。また、育成メンバーには、アーティストの支援だけでなく、社会との繋ぎ手としての重要な役割も期待されているとも。そして、支援アーティストも育成メンバーもAISプランニングが行っている他の事業でも現場体験(おとどけアートやSIAFなど)が可能であり、やりたい気持ちに応えられるよう活躍の場を提供していくことなども説明がありました。

そして、支援アーティストや育成メンバーとは、今年度だけの付き合いではなく、今後も継続した関りを持てることを期待していると、将来の展望も語られました。

 

  1. 事業担当コーディネーター小林からの説明など

今後、支援アーティストとの聞き取り(具体的な希望調査)などを進め、育成メンバーとの協働体制を構築していくとのことです。

育成メンバーの活動に関しても、現場見学だけでなく、業務の一端を担ってもらう方には有償となる旨の説明がありました。育成メンバーは現在18名登録中。今後も引き続き募集継続するとのことでした。今までアート界隈で活動したことがあってもなくても、特技があってもなくても、できることがあるかもしれません。気になる方は申請フォームからどうぞ。ご不明な点は、お問い合わせ先もリンク先に記載してありますので、お気軽に。

  • 創作活動支援人材育成プログラム【申請フォーム】

https://ais-p.jp/news/2025/08/01/ikusei/

  育成のメンバーの軽い自己紹介(がっつりな自己紹介は会議の後の懇親会で♡とのこと)が和やかに進み、支援アーティストから自己紹介&作品紹介、この事業でやりたいことや育成メンバーに助けて欲しいことなどをまとめたプレゼンがありました。各支援アーティストの発表の最後には、漆代表から審査会での評価ポイントなどの紹介もありました。以下、発表順に紹介します。

 

3.川崎 乃佳/ Nonoka Kawasaki

https://www.instagram.com/kawasaki.nonoka

アクリル画家。アクリルで動物のまなざしを描いているそうです。写実的なフォルムと実際には在り得ない多彩な色遣いが特徴的で、彼女の感じた色やその動物が感じているだろうこと、絵を観てくれる方のまなざしを考えながら描いているとのこと。最近は、神獣シリーズを描くのが楽しいとのことでした。

写真は、制作した絵本「ルドルフのちいさなしあわせ」を紹介している様子です。恐竜のルドルフ君のステッカーのプレゼントもありました。

本格的に画家として活動を始めたのは今年(2025)からですが、既に銀座や札幌での個展、チカホでのライブペインティングも行ったそう。国内外での作品の販売も積極的に行っており、札幌市内のカフェでも展示されているそうです。現在(9/13)開催中の個展や作品販売会(芸術の森アートマーケットなど)の予定もあります。今後も展覧会、個展等の予定が複数あります。特に1011日~13日に伊達市大滝区『遊水亭』で開催する展覧会は、北海道やカナダの動物や伝統をテーマにし、大滝とカナダをつなぐ文化交流を目的とした展覧会とのことで、育成メンバーにも広報や準備などのお手伝いをいただければ、とのことでした。

高校卒業後は神社の巫女としてご奉仕し、語学の必要性を感じカナダへ語学留学、その後もメキシコ滞在などの経歴を経て、アクリル画家として活動を開始したそうです。最終目標はバンクーバー美術館での展示であるとのこと。大好きなカナダに戻りたいからと言ってましたが、カナダでお世話になった方々への感謝と愛情の表れなのかもしれないなと思いました。

 

<審査会での評価ポイント>

マーケットで勝負しようと考えて実行しており、今後の目標も明確であることが評価につながったとのことでした。着実に実績を重ねているので、個別の活動に対する支援というより、大きな夢の応援という意味合いもある。チームビルド事業でなにができるのかは未知数だが、世界に羽ばたく姿を一緒に見たいと思うとのことでした。

 

4.風間 雄飛/Yuhi Kazama

https://www.instagram.com/yuhi.kazama/

版画家。天神山アートスタジオのスタッフ、芸術の森版画工房、大学講師など、沢山の草鞋を履いているとのこと。もともとは彫刻を専攻。版画へ移行した理由のひとつとして、彫刻にはない版を通すことにより、制作や作品に距離感が生まれ(自分にとって良い距離感ができた)、全体を冷静に視ることができるようになったとのこと。柔らかい作風のシルクスクリーン作品を観たことのある育成メンバーも多いようです。

写真で持っているのは、黒田ダイスケ氏が書いた「天神山アートスタジオ、まちへ行く」のメインビジュアルをシルクスクリーンの版にしたもの。天神山で開催したワークショップで使用したとのこと。

風間氏は、数年後に版画工房の設立を目指しています。札幌には借りられる版画工房が芸森しかない現状に憂いがあり、自由度の高い制作の場の提供と、市民向けのワークショップなどの版画普及活動が必要だと考えているそうです。版画工房は、様々なアーティストが集える場としても活用し、そこから表現の幅が広がることも期待しているそうです。

版画は、絵師、彫り師、摺師が関わり制作されます。現在はひとりのアーティストが全てを行うことが多いようですが、風間氏は摺師に立ち返って、分野横断的に様々なアーティストとコラボレーション(SURI-PRO)を、と考えているようです。このSURI-PROは版画工房設立活動のひとつだそうです。SURI-PROコラボ作品の展覧会、公開制作やワークショップの開催や、協働するアーティストの選定やグッズ制作の企画など、様々な可能性を育成メンバーと一緒に考えたいとのことでした。

 

<審査会での評価ポイント>

AISプランニングの関係者でもあるので、公平を期するため利害関係者(AISプランニング)抜きでの審査が行われたことが説明されました。この企画は目標が明確であること、他のアーティスト、多分野とのコレボレーションが可能であることが評価されたこと。さらに、文化インフラ(版画工房)を作るという、新しいことにチャレンジすることには支援する意義があるとの評価だったとのことでです。長い計画の一部ではあるので、今後も継続してお付き合いしていきたいと語られました。

 

5.桑迫 伽奈/Kana Kuwasako

https://kanakuwasako.com

https://www.instagram.com/kanakuwasako/

大学時代は版画を専攻しており、卒業後から写真作品に移行。どこでなにを写したのかわからないように撮影した抽象的なイメージの風景写真に刺繍を施した作品や、目的地に到着するまでに見た風景や自然を問い直すようなコンセプトの作品「不自然な自然」も制作しているとのこと。最近は、写真に刺しゅうを施す作品から発展し、プロジェクタを使用した大型作品の制作や平面インスタレーション作品も発表したとのこと。他にも、SNSにて呼びかけ、さまざまな地域の方々から提供してもらった糸を制作に使用したり、その糸を使ったワークショップも開催しているとのこと。糸を受け取る過程も含めて、コミュニケーションのあり方を作品にできたらとも考えているとのこと。

個展や企画展などの展示依頼が途切れることなく5~6年ほど続いていたが、2025年は夏以降しばらく展示予定がないので、今後を考える時間にしたいと思っているとのこと。創作活動支援プログラムに応募したのは、今までの活動を止める期間して過ごす「予定になっていない予定」を提出。レジデンス的なこともできたらいいが、制作のためのなにかをするのではなく、なるべく考えずに、これからのことを考えたいとのこと。今までの作家としてのキャリアをふり返り今後を考える過程を公開することが、これからのアーティストの助けになればいいなとも思っているとのこと。

他分野のアーティストへのインタビューなども行ってみたいので、育成メンバーから紹介して欲しいとの希望もありました。合同会議参加者からは、作品制作とは無関係のことをしてみるのも良いかもと提案がありました。

 

<審査会での評価ポイント>

展覧会やプロジェクトなどのアウトプットだけでなく、創作の過程に支援することが当事業の趣旨に合致するとのこと。企画内容が不確実だからこそ、チームビルディング事業として一緒に歩くことができるのかもしれない。今回の申請に関しては、立ち止まる勇気とこれからが未知数であることも支援する意義があると考えているとのこと。

 

6.小松 菜々子/Nanako Komatsu

https://www.komatsu-nanako.com/

 

ダンサー、振付家。いわゆる技術的なダンスだけではなく、日常の延長線上にある身体の美しさを表現したいとのこと。まち中で作品を作ることも多いとのこと。神戸市長田区という多様な方々(コリアンルーツ、ベトナム、ミャンマーからの移民、奄美からの移民など)が住む町で行った、「日常」を問い直すような「あわいにダンス」という作品の公演の様子を撮影した動画を観せてもらいました。この作品は、ダンサーだけでなく、地域の住民との協働で作品が創られたとのことです。現在は、その長田区で自宅1階を本屋として開放し、地域のコミュニティスペースとしてまちに開かれた場所として、パフォーマンスや様々なワークショップなどの開催場所の運営もしているとのこと。これは、人が集まることにより起きる奇跡のような美しい時間を演出・リサーチする延長にあるような気がしていると、小松さんは語りました。

小松さんは本州出身&本州育ちですが、家族のルーツが開拓移民であることから、北海道でファミリーヒストリーに関する調査(リサーチ)をするとのことです。移住のルーツのある方のどうして北海道に居るのかを深堀りし、移動することで失うことと新しく創られたものをアーカイブしてみたいとも(社会と繋がっている身体について考えているとのこと)。特に、北の防波堤と称された北海道での戦争体験や、函館大火の翌年に行われた港祭りでの盆踊り(函館港おどり)についても調査をしたいとのことでした。育成メンバーとは一緒に視察に行ったり、話を聞かせてもらえる方を紹介してもらえればとのことでした。

 

<審査会での評価ポイント>

アウトプットではなく、リサーチや制作の過程であることが良かった。家族のルーツが北海道であることに着目し、深堀りしていく過程への支援が当事業目的に合致するとのこと。

小松氏は、札幌市出身でも札幌在住でもないが、以前から度々来札しており、今後も毎月札幌での滞在とリサーチを重ねることとが計画されているので、活動拠点として解釈しているという補足もありました。

 

 7.審査員からのコメント

  合同会議に参加された審査員のおひとり、奈良亘さん(株式会社GOODVIBES)からコメントを頂きました。

「みなさんの考えていることをとても面白く感じています。次のステージにどう進んでいくのかを楽しみにしています。」とのことでした。

奈良さんは、主に登山ガイドとして働います。美術関係者とは違った視点での評価が新鮮で、気づかされることも多かったとAISプランニングの漆代表がふり返っていました。奈良さんのお陰で審査の幅が広がったとも。

 

アーティストの作品紹介や審査員からの講評などは、AISプランニングWEBサイトで公開されています。

  • 【審査結果のお知らせ】アーティストの創作活動支援プログラム

https://ais-p.jp/news/2025/09/12/artist/

 

第1階合同会議は、全体的に和やかな雰囲気の中(時々爆笑)で、支援アーティストそれぞれに対して活発な質疑応答があり、大変盛り上がりました。そして、このままの感じのチームビルドが出来ればいいなぁと思える時間でした。私たちは、これから2026年2月まで、たくさんの活動をしていきます。その経験が、豊かなアートの土壌を育てることに繋がると信じています。

これからAISプランニング担当者が支援アーティストに具体的な活動やスケジュールなどを聞き取り、育成メンバーとの協働作業が始まります。支援アーティストも育成メンバーも一緒に悩み、笑いながらの活動が始まります。今後も活動内容は随時お知らせいたしますので、楽しみにお待ちください。

 

番外編:懇親会

合同会議終了後に希望者で懇親会を開催しました。合同会議では充分に時間の取れなかった、支援アーティストと育成メンバーの協働を模索する時間でもあります。とはいえ、眉間にしわを寄せながらでは会話も弾まないので、気持ちを和らげるために美味しい料理が提供されました。育成メンバーのひとりが料理人となり腕前を披露(食品衛生責任者の有資格者)。彼女のエプロンは、風間氏が制作した版を使ったシルクスクリーン・ワークショップで制作したものらしいです(絵は黒田ダイスケ氏)。ワークショップ参加というアート体験が、こんな風に繋がる(黒田氏の絵と風間氏の版がエプロンになり、そのエプロンを付けて作った料理をチームビルド事業のみんなで食べる)のが不思議な感じでした。

懇親会には、昨年(2024年度)の支援アーティストの鈴木悠哉氏も参加してくれました。今年(2025年)6月に福島県立美術館で開催された展覧会の記録集を持ってきてくれました。根底にあるその作家の制作意図は共通するものがあったりするので、記録集を読むことで(その展示は見ていなくても)観たことのある他の作品の理解が深まったり、気づかなかったことに思い至ったりします。関係者以外はなかなか手にすることのない記録集を、作家本人から頂けることはそうそうないので、こういった交流の時間は貴重な機会だったりします。

懇親会には、たくさんの料理が並びました。提供されるそばから食べ始めたので、写真はだいぶ食べ尽くした感があります()おかげで会話も弾み(8割笑い話)、私たちは同じ釜の飯を食べた仲間としてこれからの活動を一緒に歩いていくのです。

育成メンバーは募集中です。下記にある申請フォームから是非に!

https://ais-p.jp/news/2025/08/01/ikusei/